家族がいれば幸せになれる。例え何も解決しなかったとしても - 猫泥棒と木曜日のキッチン

 

猫泥棒と木曜日のキッチン (新潮文庫)

猫泥棒と木曜日のキッチン (新潮文庫)

 

自分は本当は「解決する話」が好きだ。
核兵器が落ちてくるのを防ぐとか、処刑されそうな仲間を助けるとか・・・・・・せっかくフィクションを読むなら、そういう「問題を解決する」「立派な行い」が見たい。

 この作品はそうではない・・・・・・タイトルの猫泥棒とは主人公のことであり、それは悪いやつから猫を守るための行動なのだが・・・・・・何も根本的な解決にはなっていない。

しかしそれでも、読んでいて大きな喜びを感じたのはどうしたことだろうか。
その回答はあとがきに書かれていた。

そのまま書けば暗くなってしまう話ですが、常に光を見つめながら書いていました。この世の中には辛いことや悲しいことがたくさんありますが、同時に楽しいことや、つい思い出し笑いしちゃうようなことだってたくさんあります。どちらをより多く見つめるのかは、どこかの偉そうな神様ではなくて、わたしたち自身が決めることなのではないでしょうか。弱者として扱われることが多い子供達にだって、その権利はちゃんとあるはずです。(あとがきより抜粋)

そう、子供達が幸せか、そうでないかを決めるのはやはり、子供達それ自身なのだ。
たとえそれがフィクションの中の子供であってもだ。
この作品はそんなことに気づかせてくれた。