史群アル仙のメンタルチップス

先日初めて中野ブロードウェイに赴き、なんで自分はいままで一度もここに来なかったのだろうと思ったりしていた時に、タコシェという本屋で見かけて気になった人の作品。

タコシェ | 自主制作本, 書籍, CD, 映像, 絵画, 雑貨 | TACO ché

自叙伝漫画としては「失踪日記」以来の大当たりだった。 

 ADHDの自叙伝……なのだが、ADHDの診断を受ける前にヤブ医者から総合失調症の薬を大量に処方されたため、その薬の影響で生活が無茶苦茶になっていた……という話が強烈で、読み物としてはそっちの印象の方が強い。

深刻な内容なのだが、著者の経験のなかで上手くいったケースをメインに据えて、ユーモアを交えて書かれているため読みやすくて、面白い。
ADHDでなくとも、人生の問題とその対処を知るという点で興味深い視点がいくつもある。

卑近な話なのだが、自分は漫画の中で何かが成功していると自分も成功したような気分になれて嬉しい気持ちになるし、そういう本が好き。この本にはそういうシーンもあって楽しい。 

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このコマの次は最高のシーンだ。

作者のホームページでクレパス画を見たのだが、変わった心の持ち主だと一目でわかる画風だなと変な方向で感心した。

史群アル仙「クレパス画」 Cray-pas (人によっては間違いなく怖い絵なので閲覧注意)

対人恐怖症で引きこもりになっていた作者が、携帯電話で引きこもりの人専用の掲示板で人との交流を持ち、外に出る勇気をもらう話が出てくるのだが。

それは自分が昔知り合った、ウルティマ・オンラインで社会復帰した人の話によく似ていて、大変なリアリティを感じた。

その他のエピソードも、珠玉という形容がピッタリ来る出来栄え。

診断は決して「免罪符」にはなりません

これは作者からのメッセージなのだが、心の底から本心で言っている、一瞬でそう信じられる。
いや実際は少しは漫画向けに演出が入ってるかもしれないけど、知らないけど、しかし真に迫っていて素晴らしいと感じる。

菩須彦(一発で変換出来るのすごいよGoogleIME...)さんの「わかってる」対応も見ていて泣きそうになる。