漫画の中の怪演 - ザ・ファブル

1巻無料なので読んでみて、続けて最新刊の10巻まで読んだ。いや面白くて驚いた。

まず3巻ぐらいまでの感想。

自分はこういうジャンルのフィクションが好きでない。以前「新宿スワン」を途中まで楽しく読んでいたのだが、「でも実際のこういう人たちは、こんなイイ顔してないよね」「カッコいいのはフィクションの世界の中だけだよね」という気分になって途中から面白く感じなくなった。

自分にはアウトローに対する共感の気持ちがないのだろう。

しかしこの作品ではそういう気分にならなかった。
ジャンルの好みを超えて魅力が伝わってくる。大御所俳優の名演を見ているようで、登場人物の立ち振る舞いそのものに大きな魅力がある。

登場人物たちの「とあるコメディアンがとても好き」「酔い潰れてだらしなくなった男に魅力を感じる」などの設定も見事だ。漫画的で、それでいて人間くさい。 

4巻ぐらいからのミサキ編の感想。

ムショ帰りの粗暴な暴力団員が、周りの静止を聞かず筋の通らないことをする、そしてその報いを受ける、というベタな話なのだが。

かかわる人間たちが不自然に少人数になることもなく、それでいて大立ち回りのシーンで分かりにくくなったりする事もなく、構成力の高さに舌を巻く。
はっきりとしたエピソードの切れ目がなく、ファブルが淡々と生活していく話の進み方なのも渋くてカッコいい。

主人公が秋刀魚を焼いてニヤッとするだけで面白いのはズルイ。

7巻ぐらいからの感想

主人公が猫舌な理由を見て戦慄する。
ほんとうにそんな理由で猫舌になるものなのかは知らないが、とにかくすごい説得力だ。面白い。

山篭りを通して、主人公ファブルがいかに凄いかが語られる。
空手家なんかが山篭りをしてパワーアップする漫画を今までいくつか読んだことがあるが、ここまで説得力を持つ作品を他に読んだことはない。

佐藤洋子が出てくるだけで笑ってしまう。
特定のお笑い芸人を好きになった人は、その人が壇上にいるのを見ただけですぐ笑い出す状態になってしまうそうだが自分が今そんな感じ。

9巻ぐらいからの感想

社会派のようでいてそうでもないバランス感覚に安心する。
続きが楽しみ。